こんにちは。樋口です。
相手から低くて高速な球をフォアサイドに打たれると、身体に近いところであっても手が出ないことはありませんか?
目が良くない、動体視力がよくない、本当にそれだけなのでしょうか?
今回は、打球時の視線の観点から速い球に手が出ない現象に迫ってみます。
最後までお付き合いのほど、宜しくお願い致します。
(ステージ1)
【原因】打球する瞬間(インパクト)に、スピーダーが見えていない
最初から相手の方向(前方向)に顔を向けたまま打球したり、インパクトの瞬間に前(打つ方向、相手など)を向いてしまったりすると、スピーダーが視界から右外にはずれ、一瞬見失うため、ミスショットや当たり損ねをする確率が格段にあがってしまいます。
要は、打つ瞬間にスピーダーが見えていないのです。
ラリーがものすごく速いクロスミントンにおいて、上記のように「目で追って」見ようとすると、たちまち狭い目の視界からスピーダーが出て行ってしまい、スピーダーを見ないでスイングすることになってしまいます。
これが手が出なかったり、当たり損ねの大きな一因になります。
(ステージ2)
【対策】インパクト時はスピーダーの方に顔を向けて、両目で注視する
打つ際にスピーダー(相手の打球)を見るということは、クロスミントンにとって非常に大切なことです。
「顔を動かしてスピーダーを追って見る」ということです。
サイドなら右横、アンダーハンドなら右斜め下方向に顔を向きます(オーバーヘッドストロークなら、右斜め上)。
そうすると、しっかりと両目から等間隔でスピーダーを捉えることで、正確にスピーダーとラケットの位置を把握できるため、インパクト、打球射出が的確になることが期待できます。
インパクト時は顔を右斜め横の打点を、両目の均等距離から注視するようにし(スピーダーを頂点に両目を結ぶ二等辺三角形)、インパクト後、ラケットのスイングが停止したら、相手を見るようにします。
スイング速度は速く、相手までの距離は長いので、充分に間に合います。
(ステージ3)
【理由1】顔を動かすと目の手ブレ防止機能が起動する
人間の目にはビデオカメラのような「手ブレ防止機能」が備わっています。
例えば、本を読むとき、活字に従って顔を左右や縦に動かしても、文字は特に問題なく読めるとおもいます。
しかし、顔を固定して本自体を左右や縦に大きく動かしたらどうでしょうか?非常に文字を追いかけるのに苦労するはずです。
この「手ブレ防止機能」は、頭部が動く場合のみに稼働し、目自体が動く場合は稼働しないのです。
頭部が動いた場合、その動きを脳が感知して、目は逆方向に動くように補正されます。
しかし、目だけを動かした場合、その「手ブレ防止機能」が働かないため、スピーダーを一瞬見逃してしまうことがあります。それがミスの増加につながります。
【理由2】両目で等間隔にスピーダーを見ると、立体視がより機能し、スピーダーの位置把握の正確性が増す
人間の目は、顔の前方に2つ位置していることから、2つの映像の誤差を利用して、脳(視覚野)が立体視(3D)をおこなって、物体を見ています。
その分、3D空間でどの位置にスピーダーが来ているというような空間座標を脳内(頭頂部の「空間認識野」)で参照しながら、スピーダーの打球動作を実行します。
顔をスピーダー方向にしっかりと向けることで、2つの目からスピーダーが等間隔になる分、正確なスピーダーの位置情報が脳に届けられ、その後の打球動作への指示に大きく貢献します。結果、打球動作のミスが減り、正確な返球確率が上がります。
(ステージ3)
【補足】
①顔が斜め前や横に向く分、首の筋肉の捻れ動作に引っ張られて、上半身や骨盤も斜め前や横方向に向きやすくなります。
身体は骨盤の向いた方向に真っ直ぐに動きやすくできている分(左足が出るので)、動き出しもスムーズになることが期待できます。
②バックハンドも同じ内容が当てはまります。
③技術レベルが上がってくると、顔を動かさずに視野の端(周辺視野)で相手やスピーダーの動向などを見ることも可能になります。
お試しください。
今回も最後まで、お読みいただきありがとうございました。
次回は「ゲームポイントをとったのに、逆転負け。どうして?(脳科学視点編)」です。
※練習で、実際に有益な効果があがったことを確認の上で、報告しておりますが、技術の答えは、一つではないと考えております。
他の指導法を否定する意図はございません。その点ご理解の上で、お読み、お試しくださればありがたいです。